「自我(じが)」という言葉、日常的によく使いますよね。「自我が強い」「自我に目覚める」なんて言い方もします。でも、コーチングの文脈で語られる「自我」は、もう少し深くて面白い概念です。
特に苫米地式コーチングでは、「自我とは何か」を正確に理解することが、ゴール達成のプロセスを理解する上でとても大切になります。今日はその自我について、わかりやすくお話ししますね。
自我とは何か?哲学的な定義
現代分析哲学の観点から見ると、自我は「宇宙を入力にして、自分を出力する部分関数」として定義されます。
少し難しく聞こえるかもしれないので、ほぐして説明しますね。
宇宙には無限の情報があります。その中から「自分に関係するもの」と「自分に関係しないもの」を分けている機能——それが自我関数です。つまり自我とは、広大な宇宙の中から「私」というものを切り出す働きのことです。
面白いのは、このことが逆にも成り立つという点。「自分を知り尽くせば、宇宙を知ることができる」——これは東洋哲学の「一人一宇宙」という考え方にも通じています。仏教的に言えば、一人ひとりが自分だけの宇宙を生きているということですね。
自我は「重要性評価関数」でもある
もう一つの自我の定義として、「自分にとっての重要度で宇宙を並び替える関数」というものがあります。
私たちは毎日、何が大切で何がそうでないかを判断しながら生きています。お金が大事、家族が大事、仕事が大事——この優先順位づけ、これが自我の重要性評価関数としての働きです。
人が自己紹介するとき、名前、出身地、好きな食べ物など「自分以外のもの」を使って自分を語りますよね。これは、自我が「自分に関係するもの」で世界を定義しているからです。
そしてこの重要性評価は、前述のスコトーマ(心理的盲点)とも直結しています。自我が「重要ではない」と判断した情報は、見えなくなってしまう。自我のあり方が、文字通り「見えている世界」を作り出しているんです。
コーチングは自我を書き換えることを目的としない
ここがとても大切なポイントです。
コーチングにおいて自我はとても重要な概念ですが、コーチングは自我を直接書き換えることを目的とはしていません。「自我を変えよう!」とアプローチすると、コーチングはうまくいかなくなります。
では、自我はどう変わるのでしょうか?
苫米地式コーチングの原則では、クライアントが心から望むゴールの世界(新しい臨場感世界)へと移行した結果として、その新しい世界にふさわしい自我へと自然に書き換わる、という順序をたどります。
つまり、「自我を変える → ゴールを達成できる」ではなく、「ゴールの世界にリアリティを持つ → 自我が自然に変わる」という流れです。
先に自我を変えようとするのは、川の流れを上流から無理やり変えようとするようなもの。それよりも、行きたい場所に臨場感を持ち続けることで、川は自然にそちらへ流れていく——コーチングはそんなアプローチをとります。
自我を知ることが、ゴール達成の第一歩
「自我」という概念は難しそうに見えて、実はとても実践的です。「今の自分は何を重要だと思っているか?」「その重要性評価が、見えている世界を作っていないか?」——こう問いかけることで、今の自分の限界が少し見えてきます。
ゴールを決め、その世界に臨場感を持つこと。それが自我を自然に変え、新しい現実を引き寄せていく——これが苫米地式コーチングの考え方です。
自我を変えようと頑張るよりも、行きたい未来をリアルに描くことに集中する。それだけで、あなたの世界は変わりはじめますよ。
