コーチングにおける「ゴール」と、一般的な「夢」や「目標」との間には、その本質、設定される場所、そして達成プロセスにおいて、明確な違いがあります。
この違いは、単なる言葉の選び方ではなく、脳の機能(ホメオスタシスとスコトーマ)をどのように活用するかに直結する、コーチングの根幹を成す概念です。
1. ゴールと夢の決定的な違い
最大の決定的な違いは、そのゴールの設定場所が「現状の外側」にあるかどうかです。
| 特徴 | コーチングの「ゴール」 | 一般的な「夢」や「目標」 |
| 設定場所 | 現状の外側 (ワールド W2),, | 現状の延長線上、または現状の中,, |
| 達成難度 | 今の自分では絶対に達成方法が想像もつかない, | 頑張れば達成できる、方法がわかる, |
| 動機 | 心から望むこと(Want to)、止められても達成したい,, | 義務感(Have to)や、人から聞いたもの, |
| 自己の変化 | 自我(自己イメージ)が自動的に書き換わる, | 過去の実績や現状の延長に縛られ続ける, |
2. 「現状の外側」でなければならない理由
現状の延長線上にある夢や目標は、コーチングでは真のゴールとはみなされません。
現状維持のメカニズム: 人間の脳にはホメオスタシス(恒常性維持機能)があり、慣れ親しんだ状態(コンフォートゾーン)を維持しようとします,。もし目標が現状の延長線上にある場合(例:今の会社で部長になる、来年の売上を1割増やすなど,)、脳はそれを「理想的な現状」と判断し、達成が難しくても、現状維持の範疇に含めてしまいます。
創造的回避の発生: 現状の中で目標を設定すると、脳は目標達成のためにクリエイティブに動く代わりに、目標達成を妨げるための言い訳や理由(創造的回避/クリエイティブ・アボイダンス)を生み出し、あなたを現状に引き戻そうとします,,。
スコトーマ(盲点)の作用: 脳は自分にとって重要だと認識したものしか見えません(スコトーマ)。現状の延長線上の目標は、現状維持に必要な情報しか重要と認識しないため、新しいチャンスや解決策は盲点に入ったまま見えません,。
3. ゴール設定がもたらす変化
コーチングの「ゴール」は、現状の外側に設定され、心から望む(Want to)ものであるため、上記のような問題を解決します。
1. コンフォートゾーンの移行: 現状の外側にあるゴール(W2)に臨場感を高めることで、ホメオスタシスがそちらを「正常な状態」と認識し始めます。
2. 無意識の自動操縦: 脳は現状を「異常」だと認識し、その異常を解消して新しいコンフォートゾーン(ゴール)へ戻ろうと、無意識がクリエイティブに働き始めます。
3. 自我の書き換え: このワールド(世界 W)の移行の結果として、そのゴールに見合った新しい自分(自我関数 p)へと、あなたの思考や振る舞いが自動的に書き換わります。
したがって、一般的な「夢」が「頑張って追いかけるもの」であるのに対し、コーチングにおける「ゴール」は、「設定するだけで脳の機能が自動的に働き出し、人生を根底から書き換えてくれるトリガー」なのです。
