ホメオスタシス(恒常性維持機能)とは、環境が変化しても内部の状態を一定に保とうとする生物学的な働きのことですが、コーチングにおいては、これが情報空間(脳と心)にも作用し、現状(コンフォートゾーン)を維持しようとする強力なシステムとして定義されます,。
1. 基本的な定義:「元に戻す」機能
本来、ホメオスタシスは生物が生き延びるための機能です。
- サーモスタットの役割: エアコンの設定温度のように働きます。例えば、体温が上がれば汗をかいて下げようとし、下がれば震えて上げようとします。外部環境が変わっても、内部を一定の範囲(ゾーン)に保とうとする「元に戻す力」です。
2. 情報空間への拡張:想像を「現実」とする
苫米地博士は、ホメオスタシスが物理的な身体だけでなく、情報空間(脳内や想像の世界)にも及んでいることを発見しました。
- 脳の特性: 脳は「物理的な現実」と「臨場感のある想像」を区別しません。例えば、小説を読んで泣いたり、ホラー映画を見て心拍数が上がるのは、ホメオスタシスが情報空間(想像)に反応して身体を調整している証拠です,。
- コンフォートゾーンの維持: これにより、ホメオスタシスは現在の自己イメージや慣れ親しんだ環境(コンフォートゾーン)を「正常」とみなし、そこから外れると不安や不快感を生じさせて、元の状態に引き戻そうとします。
3. コーチングにおける「諸刃の剣」
ホメオスタシスは、ゴール達成において敵にも味方にもなります,。
- 敵になる時(創造的回避): 現状の外側にゴールを設定すると、ホメオスタシスはそれを「異常事態」と判断し、全力で現状($W_1$)に引き戻そうとします。無意識が「やらない理由」や「できない言い訳」をクリエイティブに発明し始めます。これを創造的回避(Creative Avoidance)と呼びます,,。
- 味方になる時(自動操縦): コーチングでは、ゴールの世界(W2)の臨場感を高めることで、脳内のコンフォートゾーンを先に未来へ移行させます。すると、ホメオスタシスは「今の現状(W1)」の方を「異常」と認識し始めます(例:「大富豪であるはずの自分の財布に千円しかないのはおかしい」)。 このズレ(認知的不協和)を解消するために、ホメオスタシスは無意識をフル稼働させ、自動的にゴールを達成するように行動を促すようになります。
つまり、ホメオスタシスとは、設定されたコンフォートゾーン(ゴールの世界)に合わせて、現実を自動的に調整しようとする生得的なフィードバックシステムなのです。
