「意志が弱い」「続けられない」「なんでいつも変われないんだろう」——そんなふうに自分を責めたことはありませんか?

実はその原因は、意志の弱さではありません。ホメオスタシス(恒常性維持機能)という、脳の非常に強力な仕組みが関係しているんです。そしてこのホメオスタシスを理解し、うまく使いこなすことが、コーチングの核心にあります。

ホメオスタシスは「情報空間」にも働く

ホメオスタシスというと、体温や血糖値を一定に保つ生理的な機能として知られていますよね。でも苫米地博士が注目したのは、これが脳の情報空間(イメージや想像の世界)にも働くという点です。

映画を観て涙が出る、梅干しを想像しただけで唾液が出る——これはホメオスタシスが「情報のリアリティ(臨場感)」に反応している証拠です。

コーチングへの応用でいうと、これはとても大切な意味を持ちます。物理的な現実が変わる前に、脳内のゴールイメージに強い臨場感を持たせることで、身体や無意識を動かすことができる——ということだからです。

ホメオスタシスは「変化の最大の敵」になることがある

ホメオスタシスの基本的な働きは「元に戻ろうとすること」です。これを理解していないと、コーチングはうまくいきません。

現状の外側にゴールを設定すると、脳はそれを「異常事態」と判断します。そして全力で今の状態(現状)に引き戻そうとする。その時に脳が使う手段が創造的回避(クリエイティブ・アボイダンス)です。

「やっぱり忙しいし」「もう少し準備してから」「自分には向いていないかも」——こういったやらない理由を、脳は驚くほどクリエイティブに作り出します。これは意志が弱いからではなく、ホメオスタシスが正常に機能して「現状維持」というゴールを達成し続けているからなんです。

ホメオスタシスを「最強の味方」に変える方法

コーチングの本質は、この強力なホメオスタシスのエネルギーを逆向きに使うことです。

やり方はシンプル。ゴールの世界(W2)の臨場感を高め、そこを「新しいコンフォートゾーン(安心できる場所)」として脳に認識させる。すると今度は、今の現状の方が「異常」と感じられ始めるのです。

たとえば「自分は豊かな状態が当たり前だ」というコンフォートゾーンを持てば、財布が薄い現状に「これはおかしい」という違和感が生まれます。その違和感を解消しようとホメオスタシスが動き始める。以前はやらない言い訳を作るために使われていた創造性が、今度は解決策を見つけるために働き始めます。

そうなると、努力や根性を使わなくても、脳と身体が自動的にゴールへと向かっていく——これがコーチングにおけるホメオスタシスの使い方です。

サーモスタットの比喩

ホメオスタシスはエアコンのサーモスタット(温度調節機能)によく例えられます。

設定温度を「現状」のままにしておけば、どんなに熱くなろうとしても冷やされて元に戻されます。でも設定温度を「ゴール」に変えてしまえば、あとはエアコン(脳と身体)が自動的にフル稼働して、その温度になるまで環境を変え続けてくれるんです。

コンフォートゾーンの設定温度を変えること——それがコーチングの本質であり、ホメオスタシスがなぜこんなに大切な概念なのかの答えです。

変われないのは意志が弱いからじゃない。仕組みを知って、その仕組みを味方につければいい。そのための方法が、コーチングです。

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